膝の痛み
膝の痛み
変形性膝関節症は、日本人では比較的女性に多くみられ、高齢になるほど罹患率が高くなります。主な原因は加齢による軟骨の質の低下で、軟骨がすり減ったり、なくなったりして膝の形が変形し、痛みや腫れを生じます。骨折・外傷などの怪我や半月板損傷の後遺症として発症することもあります。
また、膝関節には体重の数倍の負荷がかかっているため、肥満も要因の一つになります。初期の症状は、立ち上がりや歩き始めの動作で痛みを生じる程度ですが、進行すると歩行や階段の昇降、膝の屈伸が難しくなり、痛みも増して日常生活に大きな影響がでてきます。膝に水がたまることもあります。
初期や軽度の場合、運動療法や薬物療法(鎮痛剤やヒアルロン酸注射)で痛みを軽減し、日常生活を送ることが可能です。膝を温めるホットパックや低周波などの消炎鎮痛療法、膝を安定させるためのサポーターや足底板(足の下の中敷)などの装具療法が有効なこともあります。重度の場合は手術治療を検討します。手術には関節鏡(内視鏡)手術、高位脛骨骨切り術(骨を切って矯正する)、人工膝関節置換術などがあります。このような手術を検討する際は、手術後のライフスタイルについて担当医と十分話し合うことが大切です。
半月板は、大腿骨(だいたいこつ:太ももの骨)と脛骨(けいこつ:すねの骨)の間に存在する軟骨性の板で、左右の膝関節に2枚ずつあります。アルファベットの「C」に似た形状で膝の内側と外側にあり、膝のクッションとして機能し、周辺の関節軟骨を保護する役割を担うほか、膝の安定化や脚の屈伸もサポートしています。
この半月板が傷ついてしまった状態を半月板損傷といいます。膝をひねったときに大きな力や衝撃が加わると起きやすく、スポーツで、ジャンプしたときの着地に問題があった場合や、サッカーやバスケットボールなどで急な切り返しをしたときによく起こります。ときには、前十字靱帯の損傷に伴って、半月板も一緒に損傷する場合もあります。また、半月板は加齢とともに変性するため、中高年になると急ぎ足や段差を越えたときなど、ちょっとした動作でも損傷することがあります。変形性膝関節症に伴って内側の半月板損傷が起きる場合もあります。
半月板を損傷すると、膝の曲げ伸ばしの際に痛みやひっかかり感が生じます。ひどくなると膝に水がたまって腫れたり、急に膝が動かなくなるロッキングという状態を起こし、激しい痛みで歩けなくなったりすることもあります。一旦損傷すると自然治癒する可能性は低く、放置すると損傷が大きくなり症状が増悪します。
治療には保存的治療と手術治療があります。保存的治療ではテーピングやサポーターで患部を固定し抗消炎剤・鎮痛剤などを用いるほか、リハビリを含む運動療法を行います。中高年の変性断裂の場合はヒアルロン酸の関節内注射を行うこともあります。一方、スポーツなどの怪我によって生じた半月板損傷や保存的治療で改善しない場合には、関節鏡を用いた手術治療を行います。手術は損傷した部分を切り取る切除術と、損傷した部分を縫い合わせる縫合術があります。
前十字靭帯は、膝関節の中心部で大腿骨(だいたいこつ:太ももの骨)と脛骨(けいこつ:すねの骨)をつなぐ、強靭なコラーゲンの繊維束(せんいそく)であり、後十字靭帯と十字に交差して膝関節を支えています。
脛骨が前へずれないように機能するとともに、膝関節が滑らかに動くように補助する役割を担っています。この靭帯が損傷、または断裂することを前十字靭帯損傷といいます。スポーツの活動中などに、一度の大きな外傷で発生します。ラグビーや柔道で、選手同士の接触により膝を強くひねったり、バレーボールやバスケットでのジャンプ着地時に強い衝撃を受けたり、サッカーやバスケットでの急な方向転換などが原因で起こります。
スキーの転倒などでも多い膝の外傷です。靭帯を損傷すると、動けなくなるほど激しい痛みが生じ、断裂するとそこからの出血が関節内にたまり、腫れが目立つようになります。膝の屈伸も困難になってきます。
通常、1ヶ月程度で痛みは引いていき、日常生活に支障がない程度まで改善がみられますが、痛みが引くことと損傷の修復とは関係がなく、断裂すればそのままの状態です。治療をせずに放置してしまうと、歩行障害や膝がガクッと崩れる“膝くずれ”という症状を起こしやすくなります。半月板や軟骨の損傷を招き、変形性膝関節症に発展してしまうこともあります。このようなことがありますので、痛みがなくなったとしても、軽視せずに整形外科できちんと治療することが大切です。
また、スポーツに復帰できる程度まで運動機能を回復させたい場合、他の組織(ハムストリングス腱や膝蓋腱)を移植して前十字靭帯を再建する必要があります。再建は低侵襲な関節鏡視下手術によるものであり、手術後は早い段階から可動域・筋肉訓練やリハビリテーションを行います。
後十字靭帯は、大腿骨(だいたいこつ:太ももの骨)と脛骨(けいこつ:すねの骨)をつなぐ膝関節内の靭帯で、強い強度を有し、前十字靭帯と十字に交差して膝関節を支えています。膝関節のひねる動作を支えたり、脛骨が後ろへずれないように支えたりする働きがあります。この靭帯が損傷、または断裂することを後十字靭帯損傷といいます。
後十字靭帯損傷は、膝から下の部分が後方に押し込まれるような強い力がかかったときに発生します。膝を直角に曲げた状態で、地面に強く膝の前面を打ち付けたり、ラグビーのようなコンタクトスポーツで、正面から膝下にタックルを受けたり、交通事故で車が急停車してダッシュボードに膝(脛骨の上端部)がぶつかり強い衝撃を受けたりすることで起こります。
損傷すると激しい痛みが起こり、膝の曲げ伸ばしがうまくできないといった可動域制限とともに、膝全体に腫れが生じます。膝裏を押さえると痛みを認めます。また、放置した場合や損傷の仕方によっては、膝関節に不安定性を残すことがあります。
損傷の程度や患者様の生活状況によって治療法は異なりますが、強い不安定性のない部分損傷の場合、保存的治療を行うことが一般的です。脛骨が後方にずれないように装具やテーピングで固定し、リハビリで可動域の回復や筋力の増強を行うことで後十字靭帯の機能を補います。一方、完全損傷(断裂)で不安定性が残っている場合は、関節鏡視下手術による再建が行われます。
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